北海道を取りまく三つの海のうち、私はオホーツクの海が一番すきです。
清らかな海浜の花で飾られた砂丘が、ここほど美しく静かに咲きほこっているところはありません。
その砂丘のかげに網走、能取、サロマ、コムケなど大小さまざまな、無数の海跡湖がねむっています。
それでいて海は荒っぽくて、底しれない深い色をしています。
怒りだしたら手がつけられないほどあばれまわります。
私は山のような波というものをはじめて見たのは、この海岸でした。
この海岸ほど古い時代から、随分いろいろな民族が、雲の影のように通りすぎたところはないでしょう。
斜里海岸の丘陵地帯にストーン・サークル(環状列石)を残して、どこに消えてしまったかわからない人々。
網走の洞窟や砂丘に冷たく屈葬の骨を埋めて眠っている、ビリケン頭で下顎の太いモヨロ族と呼ばれている人々。
それからハマナス咲く砂丘や湖底にまで、いたるところに竪穴を残して消えてしまった種族たち・・・。
どれ一つとして解明されることなく、多くの謎を残して消えてしまいました。
日本人がここに足跡を印したのはそれほど古いことではありません。
1808年の文化5年、択捉島を襲った露艦に備えて、津軽藩士100人がこの海岸を警備するために越冬しました。
しかし、寒さと食生活に慣れない人々は、壊血病におかされ、何とか無事だったのは僅か17人だけだったそうです。
流氷の山が押しよせて、氷に乗って来るアザラシを狩って生活することを知らない日本人の、とても冬越しのできるところではなかったのです。
北海道といえば札幌ツアーで札幌しか知らないという観光客のみなさんも、ぜひ一度はオホーツク海を見に行ってみてください。
きっと圧倒されることでしょう。